個人的に、日本史の常識をひっくり返されたのが、
北条早雲not浪人説である。
実は、伊勢の浪人ではなく、伊勢氏として京で活躍した人物だった という学説がある。
この説を知ったのが数年前なのであるが、小学生の頃から信じていた常識が崩れたという
意味では、自分の中で一大事であった。
この本、早雲立志伝では、その覆された常識の世界が描かれている。
北条早雲が伊勢長盛として、京で活躍する場面、
後に伊豆に下り、伊豆半国から、小田原城を攻略し、伊豆を統一する場面までが描かれている。
後書きによると、本作はあくまで「半生」であって、
(本格的に相模へ進出していないので)この後に続編を書く計画(心づもり?)が
あるのだとか。これはうれしい。
そして、北條龍虎伝の続きを書いて欲しいというのも以前書いていたが、
その後も書く気があるもよう。これもうれしい。
本文の描写は相変わらず歴史の流れをとらえられる記述がされており、
初心者には厳しいものの、ある程度の歴史が好きな人間にはよだれが止まらない展開になること受けあいである。
他の小説はあくまでも主人公が中心になってしまいがちだが、
本作を始め、海道龍一朗氏の作品には登場人物ごとの背景や関連が詳細に描かれ、
ここのキャラクターに魅力を感じてしまう。
歴史上は政治と同じで解がない。最善と思われる策を
複雑に絡み合う事実の中から求めなければならない。
そこが、当事者(歴史上の人物)と作家には難しく、読者にはおもしろく感じられる点であろう。